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タイとマレーシアの高速鉄道整備へ

タイとマレーシアの政府が、両国の首都を結ぶ総延長約1500キロメートルの高速鉄道の整備について協議を始める。タイのアーコム運輸相が明らかにした。ひと、モノの往来を促し地域経済の発展の起爆剤にする。日本と別途進めているタイ国内への新幹線導入計画にも触れ、日タイ合弁による共同事業化を提案した。アーコム氏は日本経済新聞の取材に応じ「マレーシアと近く会合を持つ」と言明した。「東南アジア諸国連合(ASEAN)の諸都市を高速鉄道などで結ぶ必要がある。沿線の都市開発に期待できる」と述べ、鉄道整備の重要性を強調した。バンコク―クアラルンプール間の鉄道距離は日本の東京―鹿児島中央間に近い。現在は低速の在来線でつながっているが、特殊な観光列車を除き直通列車はない。構想では高速運転に向くレール幅の広い新線を建設し、直通列車を走らせる。マレーシア政府はシンガポール政府と、クアラルンプール―シンガポール間350キロの高速鉄道を2026年末までに開業させる計画を進めている。クアラルンプールとバンコクがつながると、マレー半島を縦断する高速鉄道が実現する。東南アジアの高速鉄道構想は中国の「一帯一路」政策にも合致し、同国が建設協力に関心を示す可能性は大きい。新たに浮上した大型案件を巡り、日中が再び競合する展開も予想される。ただアーコム氏は「マレーシアは中国を買っているようだ」との認識を示した。ASEAN広域鉄道構想は1995年にマレーシアのマハティール首相(当時)によって提唱された。2015年末のASEAN経済共同体(AEC)発足を受け、ひとの交流や物流の基盤となるインフラの必要性が改めて指摘されている。バンコクとタイ北部の観光都市チェンマイを結ぶ新幹線導入計画について、アーコム氏は2223年の開業をめざす意向を示した。「バンコク中心でタイは経済発展してきた。高速鉄道で広い地域に成長の恩恵を行き渡らせたい」と述べた。ネックは整備費だ。日本側の調査などから総工費5千億バーツ(約1兆6千億円)規模との試算がアーコム氏に伝わっているもよう。同氏は「タイにとって5千億バーツは負担が重すぎる。安全性は譲れないが、実現に向けて(負担軽減の)方策を考えてほしい」と話した。タイ側からの提案として挙げたのが共同事業化だ。運行会社などに日本からの出資を受け入れる。整備費用や事業リスクを日タイで分担する新たな枠組みの提案といえる。想定する出資比率には言及しなかった。アーコム氏は「共同で新幹線に責任を負ってはどうか。新幹線がある限り、我々は(日本から)技術を買い続ける。互いにメリットがある」と主張。鉄道の運行や沿線開発の実績を持つ日本を招き入れ、新幹線運営を確かなものにしたいとの考えもありそうだ。日本側は今年いっぱい、タイ新幹線の設計作業を進める。日本に比べ所得水準が低いタイでは運賃も抑えざるをえず、開業後の収支構造は日本と異なる見込み。日本側がコストダウンや出資の要請にどこまで応じられるかが焦点になる。タイの鉄道は近代化が遅れている。経済成長の停滞に直面するタイ政府は、新幹線が高度経済成長の一端を担った日本をモデルに高速鉄道で都市を結び、再成長につなげる青写真を描く。

出典:日本経済新聞

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