29日夜、タイの首都バンコクのスワンナプーム国際空港に、ガスマスクやボディアーマーを持ち込んだ英国人の男性ジャーナリスト、アンソニー・チェン(46)氏が拘束された。イラクで取材するために持っていたというガスマスクやボディアーマーと呼ばれる防弾チョッキ(防弾ベスト)はタイの法律では「武器の無許可所持」にあたり、違反すると最高5年の禁錮刑に処される可能性がある。AFP通信などによると、この英国人の男性ジャーナリストは中国のテレビ局の仕事で、イラク軍などによる過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦が続くイラク北部モスルに、タイを経由し向かう途中であったという。この件で、一緒にいたドイツ人フリー・ジャーナリスト、フロリアン・ウィトゥルスキー氏も拘束された。同氏はロイター通信の取材に対し、何度もタイを経由しイラクとアフガニスタンにガスマスクやボディアーマーを持ち込んでいたが、これまで一度も問題が起きたことはなかったと語っている。チェン氏も同様に違法性自体を認識していなかったという。
翌日30日、タイの外国特派員協会は声明を出し、タイ駐在の一部のジャーナリストは他国の武力紛争を取材する必要があると述べ、身を守る装備の携行は許可するようタイ当局に協力を求めた。外国特派員協会は海外に派遣されている外国報道機関の特派員及びジャーナリストのために運営されている。また、タイの一部の報道機関からは、ジャーナリストが危険な場所に出入りする際に必要な身体防護服(ボディアーマー)などを処罰の対象から外すべきだとの声も聞かれた。世界中の戦場ジャーナリストたちが頻繁に使用するガスマスクや防弾チョッキは、タイでは戦争兵器に分類され、持ち運びや使用には免許が必要となる。