23日(金曜日)の夜9時頃、シンガポールからタイ南部のソンクラー県に向かい航行していた軽油(ディーゼル)を積んだタイ船籍のプロダクトタンカー CP41がマレーシア領海(マレー半島東岸)で海賊に襲われ、350万リットルの軽油の内、半分近くの150万リットルを奪われた。海賊はタンカーから軽油を抜き取っている間、乗組員らを縛り上げ貴重品を奪うなどしたが、乗組員17人は全員無事であった。6人〜7人組の武装した海賊による犯行とされ、現在、タイとマレーシア当局の協力の元、沿岸警備隊による海賊船の捜索が進められている。海賊によるハイジャック事件後も残った軽油を運び航行を続けたタイのプロダクトタンカー CP41は25日、ソンクラー県南部の湾岸近くでタイ海軍の巡視船 HTMS Takbai により、発見、保護された。本来であれば、この軽油はソンクラー県のシンハナコーン郡にある会社に引き渡される予定であったという。
海賊といえば、アデン湾とインド洋のソマリア周辺海域で活発化しているソマリア沖の海賊を真っ先に思い浮かべるが、東南アジア海域での武装海賊による船舶のハイジャック事件は近年増加傾向にある。米紙ニューヨーク・タイムズは昨年9月、東南アジアがアフリカに代わり海賊事件の最多発地域になっていると報告している。 かつて海賊による船舶のハイジャックが多発していたソマリア周辺海域は、現在、多国籍部隊の活動により沈静化に向かっている。
以前は金品強奪を目的として船舶のハイジャックをしていた東南アジア海域の海賊は近年、ソマリア沖の海賊と同様に銃器を武装し、石油などの燃料を狙うようになった。ディーゼル油や軽油などが東南アジアのブラックマーケットで高く売れることが背景にあると言われている。