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2025年(上半期)のタイをニュースで振り返る

2025年上半期 タイの主要ニュース10選

カンボジア国境で軍事衝突、国境閉鎖に発展 (発生日: 2025年5月28日)

概要: タイとカンボジアの国境係争地(プレアビヒア周辺)で両国軍による銃撃戦が発生し、カンボジア側の兵士1名が死亡した。この衝突を受けて両国関係の緊張が高まり、タイ軍は6月下旬に7つの県で国境検問所を一時閉鎖して人や車両の往来を停止。カンボジアもタイからの果物輸入停止やタイ番組の放送禁止など報復措置を相次ぎ発表し、両国間でナショナリズムが高まる事態となった。

影響: 国境貿易や観光が停滞し外交関係が悪化する懸念が生じたが、両政府は外交協議による問題解決に努め緊張緩和を図っている。

大麻規制の再導入 (報道日: 2025年6月26日)

概要: タイ政府は2022年の医療用大麻解禁政策を見直し、大麻の規制強化に踏み切った。乾燥大麻の購入には医師の診断書(処方箋)の提示を義務付け、娯楽目的での使用を事実上禁止する新規制を導入する方針が発表された。これは医療目的以外の乱用や無秩序な大麻ビジネスの拡大に歯止めをかける狙いで、急成長した推定10億ドル規模の大麻産業にも大きな影響を与える政策転換となった。

影響: 観光客による大麻目的の来タイへの懸念が払拭される一方、関連業界からは混乱や売上減少を懸念する声も上がっており、合法ビジネスへの影響と規制強化のバランスが課題となっている。

ペートンタン政権の連立崩壊危機 (発生日: 2025年6月18日)

概要: ペートンタン・シナワット首相の政権が深刻な危機に直面した。カンボジアのフン・セン前首相との電話会談音声が6月18日に流出し、その内容への反発から連立与党第2党「タイの誇り党」(プームジャイタイ党)が同日政権離脱を表明した。ペートンタン氏は2024年に38歳で史上最年少の首相に就任したばかりだったが、この連立離脱により政権基盤が動揺し、主権擁護の姿勢に疑問を呈する声や首相辞任を求めるデモも発生した。首相本人は辞任や議会解散の可能性を否定し与党の結束維持を図ったものの、政権の脆弱性が露呈する形となった。

影響: 与党内の亀裂と政局不安定化により政策遂行への懸念が高まり、国内政情不安は経済や投資家心理にもマイナス影響を及ぼしかねない状況となった。

タイ代表がミス・ワールド2025優勝 (開催日: 2025年5月31日)

概要: タイ代表のスチャタ・“オパール”・チュアンスリさん(プーケット出身、22歳)がインド・ハイデラバードで開催されたミス・ワールド2025世界大会で優勝し、タイ人として史上初のミス・ワールド戴冠者となった。108か国の代表が参加した第72回大会で栄冠を勝ち取ったもので、タイ国内ではこの快挙が大きく報じられ、国際舞台でのタイ人の活躍に国民から称賛と誇りの声が上がった。

影響: タイにおける女性の地位向上や国際的評価の高まりにつながり、観光PRなどソフトパワー強化にも寄与したとの評価がある。

北部で深刻な煙霧公害(PM2.5問題) (時期: 2025年3月)

概要: タイ北部を中心に野焼きや山火事による煙霧(ヘイズ)汚染が悪化し、チェンマイではPM2.5濃度が危険水準に達した。3月にはチェンマイが世界有数の大気汚染都市ランキングで上位に入るほど状況が深刻化し、観光客減少や住民の健康被害が懸念された。政府は隣国での農業火入れが原因の一部として、汚染源となるトウモロコシの周辺国からの輸入禁止措置を検討するなど対策強化に乗り出した。

影響: 大気汚染による経済損失(観光業への打撃や医療負担増)が問題視され、大気浄化法の制定など恒久的な環境対策の必要性が改めて認識された。

1万バーツのデジタルマネー給付策を延期 (発表日: 2025年5月19日)

概要: タイ政府は選挙公約だった国民1人当たり1万バーツのデジタル給付金(デジタル財布)支給第3弾の実施を当面延期すると正式発表した。国家経済社会開発評議会(NESDC)が2025年のGDP成長率見通しを僅か1.8%と低く見込む中、世界的な経済減速や米国の関税措置による逆風で財政負担が懸念されたためとしている。用意されていた1,570億バーツの予算は他の景気刺激策に振り向けられることになり、政府は「あくまで一時見送りで経済状況が好転すれば実施する」と強調した。

影響: 政権の目玉政策延期により与党プアタイ党への失望感も指摘されたが、財政健全性確保と経済環境への柔軟対応を優先した判断として、市場からは安堵感も示された。

タイ国際航空の再建計画完了と株式再上場へ (発表日: 2025年6月16日)

概要: 国営航空会社タイ国際航空は、2020年から進めていた債務再生手続き(会社更生計画)を完了し、同年8月にも株式市場での取引再開(再上場)を見込むと発表した。同社は2020年の経営破綻後、人員半減や機材売却などのリストラを経て財務改善を図り、2023年以降は四半期ベースで連続黒字を計上するまでに業績が回復した。裁判所認可ベースで約1,900億バーツの債務の半分以上を返済済みで、残債も10年以内の完済計画が立てられている。

影響: 看板企業の再生成功は観光・航空業界に明るい兆しをもたらし、タイを地域航空ハブとする戦略にも追い風となった。長期債務の削減により財務基盤が強化され、今後の設備投資や路線拡大にも前向きな展望が開けている。

プラチンブリ県でツアーバス横転事故(18人死亡) (発生日: 2025年2月26日)

概要: タイ東部プラチンブリ県で研修旅行中のタイ人グループを乗せた二階建て観光バスが横転事故を起こし、乗客ら少なくとも18人が死亡、23人が負傷した。下り坂でブレーキが故障し運転手が制御不能となったことが原因とみられ、当局が車両整備や安全基準違反の有無を調査している。タイは交通事故による死亡率が世界でも上位に位置する国であり、今回の事故を受けて当局はバス事業者への検査強化や再発防止策を打ち出した。

影響: 大勢の犠牲者を出した惨事は国内に大きな衝撃を与え、観光業や公共交通機関における安全対策への信頼回復が急務となった。政府は道路安全対策の強化や法規制見直しを進め、慢性的な交通事故多発の是正に取り組んでいる。

査証免除滞在期間の短縮(60日→30日)方針 (報道日: 2025年3月18日)

概要: タイ政府は観光目的で入国する外国人に対する査証(ビザ)免除での滞在可能期間を、現在の最長60日から30日に半減する方針を明らかにした。2024年にビザなし滞在上限を60日に延長して以来、一部外国人が長期滞在中に不法就労や無許可営業を行う事例が増えたとの指摘があり、関係省庁が原則として短縮に合意したという。長期滞在を悪用した外国人の違法ビジネスや無許可の民泊貸し出しが問題化しており、滞在期間短縮は観光客受け入れへの影響を最小限に留めつつ不正行為に対処する狙いがある。

影響: タイの観光業にとっては長期滞在者の減少につながる可能性があるが、一方で不法就労取り締まりによる治安維持やタイ人雇用保護の強化が期待される。政府は短期滞在の旅行者誘致策(例:リピーター向けプロモーション)などで観光産業への影響を緩和する方針を示している。

最低賃金の引き上げ実施 (施行日: 2025年1月1日)

概要: 2025年初めにタイの法定最低賃金が改定され、全国で日額337〜400バーツに引き上げられた。与党プアタイ党は全国一律400バーツへの大幅引き上げを公約していたが、賃金委員会の決定により地域差が残る妥協策となり、最高額の400バーツはバンコク首都圏や観光地プーケットなど一部地域に限られた。それでも平均で約3%の賃上げとなり、物価高騰下で労働者の生活改善に寄与するとともに、個人消費を下支えする景気刺激策の一環として位置づけられている。

影響: 賃上げは低所得労働者の購買力を高め地域経済に波及効果をもたらすと期待される一方、中小企業には人件費負担増となるため政府は補助金や生産性向上策を講じて影響緩和を図っている。

参考文献・URL

  • reuters.com
  • theguardian.com
  • jp.reuters.com
  • scmp.com
  • nationthailand.com
  • laotiantimes.com

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